プロローグ

私は田舎の大家族の家で生まれ育った。

男兄弟が多かったことに加え、名前の「杏(あんず)」も兄弟に「キョウ」と呼ばれていたので、兄たちにくっついて遊んでいた時期は、自分のことを本当の男の子だと信じていた。

小学校に入学してからの友達も男の子が多く、その中でもひろくん、純ちゃん、やっちょとは、毎日夜まで遊びまわるほど仲が良かった。

純ちゃんは、いわゆる「ガキ大将」で、ひろくんは、心優しい「泣き虫」。そしてやっちょはつかみどころのない「変な子」だった

最後に、「男の子みたい」な私が混じった4人。

学校でも、家でも、どこへ行くのも、何をするのも。

これだけ仲のいい友達もめずらしいというくらい、私たちはいつも一緒だった。

ずっとこの関係が続くものだと信じて疑わなかったあの頃。

 

真夏のアスファルト。

陽炎と、セミの鳴き声。

火傷しそうな、自転車の荷台。

 

見えるのは、うっすらと汗が滲んだTシャツ。

聞こえるのは、車輪の音。

香るのは、森の匂い。

 

思い出すのは、森の匂い。

 

 

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